理学療法士の現場から伝えたいこと

フレイルは早い段階で気づくことが大切

フレイルとは、加齢に伴う予備能力の低下により心身の活動が弱まり、「健康」と「要介護」の間の状態を指します。日本老年医学会の定義でも、身体・認知・社会的側面が複合した高リスク状態として位置づけられています。このフレイルの状態と言うのは、厚生労働省・日本老年医学会では、早期に気づき、介入すれば元に戻せると明記されています。

要するに、介護が必要な状態にはなっていないけど、元気な時と比べると弱っている状態と言えるでしょう。フレイルの状態であれば、まだ何とか頑張ることによって元気な姿に戻ることも可能なのです。

フレイルの多面的構造【3つのフレイル】

フレイルの中にサルコペニアが位置付けられていると考えることができますが、フレイルはそれ以外にも精神的な要素と社会的な要素を含めた概念です。そのため、フレイルには3つの側面があります。

1.身体的フレイル

一番イメージしやすいのが身体が弱ってくることを表すフレイルです。さきほどのサルコペニアが筋力が弱っていることであり、身体的フレイルと考えることができます。

2.精神的フレイル

高齢になると「老人性うつ」と言われるうつ病のように気持ちがふさぎがちになります。若いころは活気があって元気にあふれていた人も、好奇心が少なくなって新しいことに取り組むことが億劫になったり、何をするにもやる気が起きなくなったりするのは精神的フレイルと言えます。

3.社会的フレイル

定年退職してから、社会的なつながりが途切れてしまって、外に出るきっかけが少なくなり家に閉じこもりがちになる人もいます。また、老後まで一緒に連れ添って生活してきたパートナーが不運なことに他界してしまうことで一人ぼっちになってしまうことも社会的フレイルと言えます。

フレイル予防に取り組んでほしい人

理学療法士としての臨床で感じるのは、要介護状態の区分で考えたときに「要介護1」の状態が何とか介護なしでの生活できる状態まで戻ることが可能なラインと言えます。「要介護2」よりも介護度が上がってしまうと、いくらリハビリを頑張ったとしても介護なしでの生活に戻るのは難しいと感じます。

病院に来ることなく在宅生活をしていれば、わざわざ介護保険を申請しようという人はあまりいません。しかし、病院に入院した時にはすでに要介護に近い状態の人もいるのが現実です。そういう人たちは、病院に入院したから要介護状態になったというよりも、家で生活しているときからすでにフレイルが進行していたと考えることができます。

適切な運動・栄養・社会参加で改善可能=「予防医学として最優先」

どうしてフレイルになってしまうのか?

フレイル予防をするためには、フレイルがどのように進行していくかを知る必要があります。よく、フレイルというのは身体が弱ってきたから起きるものだと考えがちですが、実は違うのです。

フレイルが起きる一番最初のきっかけは、「社会とのつながり」がなくなってくることです。要するに社会的フレイルが最初にきっかけになります。

どんなに動けていたとしても、外出することがなくなってしまい家の中だけで過ごすようになると、運動機会もなくなるし、動かないことで食欲もなくなってきます。そうなると、フレイルに大きく近づいてしまいます。

次のきっかけは口(口腔)が弱くなってくることです。口といっても噛む力のことだけでなく、歯が大事です。まずは歯がしっかりとそろっていなければ噛むこともできませんので、歯が大事。

その次が栄養です。食事でしっかりと噛むことができなければ、固いものを食べるのが難しくなりますし、食べられるものに偏りがでてきます。また味覚も重要で、味がしっかりと分からなければ食欲も減ってしまいます。そうなると食事量が減ってきてどんどん食が細くなり痩せていってしまうのです。

そして最後に運動機能が弱ってきます。しっかりと栄養が摂れないわけですから、身体を作る元となる材料がありませんし、身体を動かすためのエネルギーも不足してしまいます。そのため、だんだんと運動機能も弱ってしまいフレイル状態になってしまう、ということです。


フレイル予防の3本柱

フレイル予防には3つの柱があると考えられています。まず一番最初に挙げられる柱が「社会参加」です。なぜかというと、フレイルが進行していく原因となる元をただしてあげないと、いくら運動だけ頑張ったとしても根本的な解決にはならないからです。社会にでるきっかけをつくることができれば、そのあとの問題も少しずついい方向に回り始めます。

そして次の柱が「栄養(+口腔)」です。運動を頑張って効果を出すためには材料となる栄養がなければいけません。栄養がない状態で運動を頑張りすぎると逆効果になってしまいます。

そして最後が「運動」です。理学療法士として介入できる項目が「運動」になりますので、運動を中心とした介入計画を立てていきます。しかし、フレイル予防の観点で最適な介入方法を考えたときには「①社会参加」の動機を作っていくことから始めて「②栄養(+口腔)」と「③運動」に介入していくことが有効です。

① 社会参加|孤立は最大のリスク因子

  • 週1回以上の外出でフレイル発症率が約半減
  • IT活用による新しい社会参加の形

② 栄養・口腔|食べられる力は生きる力

  • フレイルの本質は「タンパク質不足」
  • オーラルフレイルが全身虚弱の入口

③ 運動|歩行と筋力を守る「貯筋」

  • 下肢筋力・バランス能力が歩行寿命を左右
  • スクワット・片脚立ちなど自宅運動の有効性

まずは現状を知るところから

多くの人は気づいた時にはフレイルが進行しています。普通に生活をしていれば、体力測定をする機会はめったにありません。三原市の市民体育大会に出場するために町内会で体力測定をする地域もあると聞きますが、体育大会に出ようと思っている人は元気な人が多いです。

それよりも、あまり外出する機会がなく運動習慣もない人が一番危ないです。生活するうえでは問題ないため見過ごしてしまいがちですが、着実にフレイルに近づいている可能性が高いでしょう。

だからこそ、まずは今の自分の現状を知ることが大事になってきます。このサイトにはフレイルチェックツールがありますので、今すぐチェックしてみてください。

その結果で元気だったからといって、油断はしないようにしてくださいね。今の元気を保つためにもメンテナンス(トレーニング)は必要になります。また、結果がフレイルだったとしても心配はいりません。フレイルは頑張れば元気に戻ることができるので、これから頑張っていきましょう。

その状態を知るためのチェックツールですので、ぜひとも活用してみてください。


まとめ|フレイル予防に身体のメンテナンス(トレーニング)を

年をとってくると、どうしても身体の衰えを感じるものです。しかし、フレイルになるのは年齢のせいではありません。若いうちから適切な身体のメンテナンス(トレーニング)を行っていけば防げるのが「フレイル」です。

できれば40歳から老後を見据えて身体のメンテナンス(トレーニング)を行っていただくのがいいのですが、40歳代と言えば仕事や子育てなどで忙しい世代でもあります。身体の不調もあまりない年代ですから、どうしても自分の身体のことは後回しにしてしまいがちです。

別に40歳をとっくに過ぎていたとしても大丈夫!これから頑張って身体のメンテナンス(トレーニング)をしていけばフレイルを予防することができるのです。たとえフレイルの状態であっても、冒頭でも説明したように頑張れば元気な状態に戻ることもできます。

しかし、何もしなければ何も変わりません。それどころか、何もせずに今の生活を続けていると毎年1%ずつ筋力は弱ってくると言われています。そのためにも、若い時からメンテナンス(トレーニング)を始めていくことが大事なのです。

今より若いタイミングというのはこれから先ありません。一番若い”今”のうちに身体のメンテナンス(トレーニング)を始めていけば、元気な老後を過ごせるようになるのです。

今日からできることとして、フレイルチェックツールを使ってみてくださいね。

リハプロ代表
理学療法士
山陽地域を中心に活動する、臨床経験18年目の現役理学療法士です。これまでのキャリアで延べ6万単位以上の理学療法に従事し、特に高齢者の自立支援とフレイル予防を専門としてきました。
4児の父として育児に奮闘する傍ら、現在の医療・介護報酬の限界を打破するため、最新のIT・AI技術を駆使した「介護に頼らない健康的な身体を維持する仕組みづくり」に挑戦中。
当サイト「ジョグタイム」では、医学的根拠(エビデンス)に基づいた正しい運動知識と、40代から意識すべき「フレイル」対策を、理学療法士の視点で分かりやすく解説します。
【保有資格・実績】
・理学療法士
・フレイル・介護予防関連の臨床経験あり
・Pythonを用いたリハビリ支援システム開発中